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執筆者の写真Toshihiro Doi

遠隔教育

今週は定例の東京ミーティング祭りと、長﨑への出張だった。久しぶりのクルマ移動だったが、武雄市から嬉野まで高速道路は通行止めで、迂回路を通ったのだが、その被害の大きさを見てびっくりした。川からあふれたであろう泥が家の中にたくさんあり、ボランティアの人たちも多くいた。決して大分も人ごとではない災害、異常気象が続くからこそ備えの大切さを感じる。1日も早く復旧し、これ以上被害がないことを祈るばかりだ。



さて、先週発表された文科省の概算要求、ざっと目を通して関係のある部分をスライドにまとめている。一際目を引くのは「GIGAスクールネットワーク構想」だ。375億円が計上されている。もちろんこれは要求段階なのでこれから交渉を重ねて予算獲得をするのだが、概算要求から、方向性やねらいは読み解くことができる。そして何より紐付きの予算であることが大切だ。しかし、半額補助なのでそれぞれの自治体も予算立てをして、取りにいっている事が前提となる。来年度の予算のためにはもう動き出さなければ間に合わない。


遠隔教育、遠隔授業などが話題になることが増えてきて、聞かれることも多い。国の方でも色々と実証がスタートしているが、県にいた時は3年以上前から遠隔に取り組んでいた。そのバリエーションは様々で、高校や小学校、特別支援学校、いろんなパターンで行なっていた。中でも自分として一番よかったのは特別支援学校での実践だ。病院と併設している学校で、院内で過ごしている子どもたちがいる。そんな子には先生たちが定期的に病室で授業を行なっている。もちろん重度の子なので体調にもよるが、基本的には学校へは行けない子が多い。



当時先生たちは自分たちのスマホを使ってLINEなどで中継したり、iPadで録画したものを後で見せたりしていた。その先生たちの要望で、学習発表会とつなぐ試みを行ったのだ。病院内は無線LANの使用は難しく、セルラーの帯域を使うしかなかった。体育館の大きなモニターに映る病室の子どもたちの様子にみんな大喜びだった。できなかったことができる、参加できない子どもたちが参加できる、これこそICTの活用の意義が私の中で大きく変わった瞬間だった。その後も学校は実践を続け、運動会に参加できるような仕組みを作って、テレビなどでも大きく取り上げられた。


遠隔システムを使った授業は、インパクトもあるが、色々な教育課題を解決していく可能性を秘めている。特に地方の小さな学校は統廃合を防ぐ一つの方策にもなり得ると思っている。しかし、ただつながって手を振って、自分たちの地域をプレゼンしているだけではそこで終わりだ。遠隔を使って、授業をどう構成していくか、そもそもどんな教育課題があり、どのような効果を期待して取り組み始めるか、そこが大切だ。



まだまだ現状のシステムや機器構成には課題がたくさんある。取り組みをスタートするにはお金もエネルギーも技術も必要だ。しかし取り組んでみる価値はある。子どもたちの多様な学び、広がりのある学びのためにもこれからたくさんの実践が起きてほしいし、自分の知見でもカバーしていきたい領域だ。まずは家族や友だちとのテレビ電話から始めてみませんか?

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