top of page
  • 執筆者の写真Toshihiro Doi

近いとこから世界を見る

10月に入り今年もあと3ヶ月。なんという一年だったんだろう、去年の今頃こんな年になるとは誰も思っていなかっただろう。あっという間に世界は変わり、常識は変わった。人との距離感や、関係性までも変わり、街で会っても気づくことが少なくなった。人の顔が見えないことのストレスや、何かを間に挟まないとコミュニケーションがとれないストレスは、見えないうちに心を蝕んでいるのかもしれない。


この生活に終わりは来るのだろうか、それともこっちが普通の生活になるのだろうか。先が見通せない不安や、解決できそうにない課題はたくさんある。こういうことがこれからもっとたくさん起きるかもしれない。そんな不安をつい抱いてしまう。





今週のブログは「近いとこから世界を見る」というタイトルにした。ICTからは少し離れるかもしれないが、これからの未来を考えていくために必要な視点かもしれない。


私は米作りや野菜作りをしている。田舎に住んでいる大きな理由の一つだ。米作りは10年以上だが、野菜はさらにもう10年くらい前からだ。学校の空き地を耕して畑にしたこともあったし、ベランダでたくさんの野菜を作ったこともあった。自宅でも引っ越した先でなんとか工夫して作り続けてきた。


今の家を建ててからは、庭で野菜、借りた田んぼでお米を作っている。最近は前庭で花も育てている。今年の田んぼでの米作りも、先週終わった。1月の寒い時期に耕し始めた田んぼも、10月にはシーズンを終える。


実は、ここ2年、大失敗が続いている。先週の日曜日に池の周辺の草刈りをした時は、元気に育ち、たわわに実っていた稲を見て、10日くらいには稲刈りかな、などと相談していたのだ。しかし、その週の水曜日に、同じ集落で米をつくっている方から連絡があり、稲が倒れている、とのこと。まさかと思って仕事の合間に見にいくと・・・





先週まで、多少の台風での倒伏はあったが、見事に8割以上の稲が倒れ、枯れていたのだ。その原因は「ウンカ」という害虫による被害だ。中国やベトナムで発生したウンカは、日本に飛んできて、収穫間近の稲の根元について、全ての栄養を吸いとって枯らしてしまうのだ。根元に飛来してきて、田んぼの真ん中から被害に遭うので、気づいた時にはもう遅く、あっという間に全てやられてしまう。県内でも多くの農家が今年も被害にあっている。


その主な原因は、温暖化だと言われていて、年々その被害は大きくなっている。自分の毎日食べる主食を作るプロセスも、地球温暖化によって変容している。





持続可能な開発目標SDGs」という考え方が提唱されたのは2015年9月の国連サミットだ。2030年までに達成したい17のゴール、世界規模の大きな目標だ。しかし私は、自分の米作りのプロセスの害虫被害によってそのことを思い直した。


学校でも近年、SDGsに取り組むところが増えてきた。社会全体で考えることはとてもいいことだと思うし、子どもたちにこそ伝えるべきだ。しかしそれは、新しいことを世界規模で考え始めるのではなく、実はとても身近に、自分たちの周りにある様々な課題も、世界とつながっていることを知る、ということが大切なのではないか。


自分の生活、地域の課題、家族の問題、そういうものを一つずつ深く考え、原因を探っていくと、実は世界の問題と同じ、ということに気がつくはずだ。毎週の海岸清掃でも、米作りでも、実は世界が抱える大きな問題と必ずつながっている。


ということは、自分たちの身の回りにある困りを紐解いて、できることから少しずつ始めることが、世界を変えるのではないか。それが持続可能な開発目標、ということの意味かもしれない。


教育の場で必要なことは、身近にある課題を解決することこそが、世界を変える、と言い切ることかもしれない。子どもたちの、主体的な地域課題の解消や、地域に開かれた学校づくりは、そんなとこから始まるはずだ。



閲覧数:145回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page